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Twitter Log(2015/05/11〜12)

5月9日(号泣の日)で妄想し、
【2015年5月10日〜11日】にツイートした内容をまとめます。


兄さんの母の日と、森永くんの母の日。

 そんな妄想ですcoldsweats01

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「すまんな。せっかくの日曜日なのに、
 こんなんにつき合わせて」

「なに言ってんですか。
 今日は母の日だから、
 先輩のお母さんにプレゼントを渡しに来たんでしょ。
 “こんなん”じゃないですよ」

「…そっか。わりぃな」

「だから、いいんですって」

宗一が、お墓の花筒に柄杓で新しい水を注ぎ入れ、
しきびと花をいける。
いつもの墓参りなら菊やその季節の花だが、
今日は数本のカーネーションがメイン。
しかも、見慣れない白だ。

森永は、宗一のその様子をぼんやりと眺めながら、
線香の束に火をつける。
ゆるりと昇っていく白い煙が目にしみる。

母の日……か。もう、何年も何にもしていないな。
あの時から、自分と親との間に出来た亀裂は、
大きくもなっていないし、深くもなっていない。

とはいえ、小さくも浅くもなるはずもない。
互いに、拒絶し、拒絶されてから、
もう何年も時間が止まったまま、なのだ。

「おい、森永。線香」

ぼんやりして、無意味に線香の煙を浴びている森永に、
「火がついたんなら、早くよこせ」とばかりに、
宗一が手を伸ばす。

「あ、すみません。
 熱いから気をつけてくださいね」

「ああ、サンキュウな」

森永から線香をうけとり、数本を抜き取って線香立てに立てる。
その様子を眺めながら、まるで侵蝕していくかのように、
重く寂しい気持ちが心の中に広がっていく。

「ほら、お前も」

朝からぼんやりしてばかりの森永に、
怪訝な目を向けながら宗一が線香を手渡す。

「あ、ありがとうございます。それじゃ……」

ニコッと微笑み、
受け取った線香を何事もなかったかのように立てた。

柄杓で水を汲み、墓石の静かにかけながら、
宗一がポソリと呟いた。

「悪かったな」

「もう、先輩、なんですか? 
 さっきから変ですよ?」

「だから……その……、
 お前、母の日なんて、あんまやりたくねぇんだろ?」

図星、だ。
なんの前触れもなく放たれた言葉が胸に刺さる。

「いつまでたっても実家の話はしたがらないし、
 帰省する素振りだってねぇだろ。
 なんつーか、こういう親子のなんとかっみたいなイベント、
 イヤそうだしな」

「はは……まぁ、ね……」

「うちはもう、母さんはいないから、
 こういうカタチでしか会えないし、
 年に数回のことだからって、
 お前も一緒に連れて来たけど……悪かったな」

さっきから、ずっと何かを謝っていた宗一。

心ここにあらずといった森永の様子を見て、
自分が迂闊だったと思っていたのだった。
いつもの森永なら、
ここでウソでも「気にしてませんよ」と笑顔を浮かべるだろう。
しかし、宗一の気遣いが、より心を重くしていった。

「オレは……先輩が羨ましいです」

ふいに、森永の口から本音が転がり出た。

「先輩の胸の中には、
 お母さんとの楽しかった思い出が、今でも生きてるんでしょ? 
 巴くんやかなこちゃん、宗仁さんたちと一緒に、
 家族揃って笑顔で過ごした日……とか……」

「ああ。ま、オヤジは居ない時のほうが多かったけど……」

「お母さんを思い出す時は、やっぱり笑顔でしょ?」

「ああ……」

「……やっぱ……羨ましい……です」

ポツっと小さく呟いた時に、
ポツンと涙の雫が一粒、落ちた。

オレだって、両親と良い関係だった時期があった。
いつもは厳しい父だが、勉強やスポーツで成果を上げれば褒めてくれた。
時々見せてくれる優しい顔が見たくて、
オレはもっともっと褒めて欲しくて、何でも頑張った。

母は、父の顔色をうかがうような人だったが、
それでもオレのアタマを撫でてくれる手はいつも暖かかった。

父の母の思い出を遡ると、心地よい記憶に自然と笑みがこぼれる。
しかし、そんな柔らかな気持ちも、いつも途中で真っ暗になる。

あの時、オレの言葉をカケラも信じてくれなかった人たち。
オレを責めた人たち。
どんなに手を伸ばして近づこうとしても、
その手を振りほどき、オレを切り捨てた人たち。
明るい思い出を黒く塗りつぶし、漆黒に染めてしまう。

親との死別は、心が引き裂かれるほど辛かろう。
そんな思いを味わった宗一よりも、
自分の方が不幸だと言えば、
とてつもなく傲慢に違いない。

しかし、幸せな記憶の中にだけ存在している母は、
いつでも子どもを強くし、守ってくれるものだ。

だが、どうだろう。
お互いに生きているのに、
顔を会わせば傷つけ合うことしかできない関係が、
それより幸せだと言えようか。

ポロポロと大粒の涙が、森永の目からこぼれ落ちる。

父や母を「あの人たち」と呼ぶのは、
記憶の奥に生きている、優しかったあの頃に両親と区別したいから。
そうでもしないと、
自分の中に大きくて暗い空洞が出来てしまいそうで、
怖くて仕方ないのだ。

「オレだって本当は、あの頃に戻りたいのに……」

口に出せば、また心がグラついてしまう。
その思いを封印して、あと土地を捨てたはずだ。
2度と口にしないと改めて誓い、言葉を深く飲み込んだ。

「……ホント……すまん……」

宗一の小さな声が聞こえたと思った次の瞬間、
ふわりと抱きしめられた。
向かい合った宗一の手が後ろから森永のアタマに触れ、
自分の肩に乗せようとそっと誘導する。
もう片方の手が抱え込むようにしてから、
森永の背中をポンポンと叩く。

まるで、子どもをあやしているようだな。
ふと、第三者のように思えた途端に、嗚咽が洩れた。
それにつられるように涙がさらにポロポロと流れはじめ、
さらにもっと大きな声が出た。
言葉にならない、吐き出すようなその声が、
静かで厳かな空間にしばし響き渡っていた。


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テーマが号泣なので、救いのないシーンのみでした。

これの焼き直しみたいな感じで、
お誕生日企画本の1シーンを書いています(ネタバレ)。

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